目標を達成したのに、なぜか虚しい——その理由
ずっと欲しかったものを、ついに手に入れた。昇進した、合格した、引っ越した、念願のものを買った。なのに、想像していたほどうれしくない。むしろ、なぜか胸にぽっかり穴が空いたような気がする。そんな経験はありませんか。それは、あなたが感謝を知らない人だからではありません。心には、そういう仕組みが備わっているのです。
叶った願いは、すぐに「あたりまえ」になる
心理学では「快楽順応」と呼ばれる働きがあります。どんなにうれしい出来事も、手に入れた瞬間からだんだん日常に溶け込み、やがて「あって当然のもの」に変わっていく、という性質です。
つまり、虚しさは異常ではありません。新しい喜びは、驚くほど早く背景に沈みます。昨日まで夢だったものが、今日にはもう景色の一部になっている——その速さに、心が追いつかないだけなのです。
「達成者の虚しさ」というもの
ゴールに向かって走っているあいだは、目標が灯台のように前を照らしてくれます。ところが、たどり着いた瞬間、その灯りは消えます。次に向かう先がまだ見えないと、人はふいに足元が暗くなったように感じます。
目標が大きく、長く頑張ってきた人ほど、この落差は深くなります。「あれだけ望んだのに、これだけ?」という静かな失望。それは欲張りなのではなく、走り続けてきた人だけが知る、ごく自然な反応です。
喜びを「自分のもの」にし損ねている
もうひとつの理由は、喜びを味わう時間を持たなかったことです。叶ったその瞬間に、もう次の課題、次の不安へと心が移ってしまう。立ち止まって「うれしい」と感じるひまもないまま、達成は通り過ぎていきます。
喜びは、ただ起きるだけでは身につきません。気づいて、言葉にして、少し留まって初めて、自分のものになります。味わわなかった喜びは、つかんだそばから手のひらをすり抜けていくのです。
次へ走る前に、いったん止まる
虚しさの解毒剤は、新しい目標を急いで立てることではありません。むしろその逆で、すでに叶ったことの前で立ち止まることです。
今日、すでに手に入っているものを思い出してみてください。一年前の自分が「叶ったらいいな」と思っていたことのうち、今では当然になっているものはありませんか。それに気づくだけで、足元の景色は少し違って見えてきます。
達成を、ちゃんと数える
私たちは、まだ手に入っていないものは熱心に数えるのに、すでに叶ったものは数えるのを忘れがちです。だから、いつも何かが足りない気がしてしまうのです。
次のゴールへ駆け出す前に、一度だけ振り返ってみてください。叶えてきたものを書き出して、ひとつずつ「これは、ちゃんとうれしかったな」と感じ直す。喜びは、追いかけるよりも、すでにあるものを見つめ直すほうが戻ってきやすいものです。
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